禁じられる遊び 〜 本気でヘコむ29歳
「大佐・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「大佐!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「時間、なくなってしまいますよ。図書館いかなくていいんですか?」
「いいからほっといてくれ・・・・・・」
 肩をとんとんと叩くリザの手を振り払うように、ロイは膝に顔を埋めたまま器用に身体の向きを変え背中を向けた。すっかりいじけきったその様子に、リザは立ち上がるとやれやれとロイには聞こえないよう小さくため息をついた。
 リザの完全勝利でゲームが終わった後、ロイがごねにごねて泣きの一回を行った。が、またもロイは一歩もその場を動くことなくリザの完封勝利。じゃんけんで都合34連敗したロイは、石段の一段目で三角座りをした状態で動かないこと既に1時間。
 傾き始めた太陽が、しょぼくれたロイの背中をオレンジに染める。いつまで経っても動こうとしない、あまつさえ地面にのの字を書き始めそうなロイに、リザはついに業を煮やした。
「図書館はもういいというんならこの街に用事はないでしょう。さ、帰りますよ!」
 そうしてロイの襟首をむんずと掴むと、駅へ向かって歩き出す。
「わわわ、ちゅ、中尉、ちょっとまっ・・・・・・」
「ほら、急げばまだ17時台の汽車に間に合いますから!」
「いやっ、だからちょっ、まっ・・・・・・リザちゃんッ、リザちゃーーん・・・・・・・・・・・・・」
 お尻や脚が石畳にごんごんぶつかっていたいんですけどッ!そもそもめちゃくちゃ首が苦しいんですがーーー!!絞まるッ 絞まるからリザちゃんッッッ・・・・・・・・・!
 夕暮れの街に、ロイの絶叫がこだました。

 その翌日。
「おいハボック」
「なんスか」
「私とじゃんけんしろ」
「ハァ?何をいきなり・・・・・・」
「いくぞ、じゃーんけーん・・・・・・」

「ブレダ!」
「あぁ大佐、どうもです」
「じゃんけんするぞ」
「何を藪からぼうに・・・・・・」
「いいから!じゃーんけーん・・・・・・」

「ファルマン!!」
「おや大佐、息を切らせてどうかなさいましたか」
「わ、私と・・・、じゃ・・・けんを・・・・・・」
「ふむ。じゃんけんとは、二人以上の人が片手で石(ぐう)・はさみ(ちょき)・紙(ぱあ)の形をつくり、どの形を出したかで勝負を決めること。また、その遊び。石ははさみに、はさみは紙に、紙は石に勝つ」
「そんなことはわかってるんだ!!いいからいくぞッ。じゃーんけーーん・・・・・・」

「フュリー!ここにいたのか!!」
「あ、お探しでしたか大佐。も、申し訳ありま・・・・・・」
「じゃんけんだ!」
「え?えぇ??」
「じゃーんけーーーん・・・・・・」

 ・・・・・・その日以来、ロイは二度とじゃんけんをしようとはしなかった。もしうっかり彼の前でじゃんけんという言葉を出そうものならその人間は瞬く間にちりちり真っ黒なアフロヘアへと髪型を強制的に替えられ、軍での出世の道は閉ざされたという。
 そしてロイが大総統になって以後、軍紀に『じゃんけんは何があっても絶対禁止』の項目が付け加えられ・・・・・・るかどうかはまだまだ先の話である。

オチその一は、ロイじゃんけんに38連敗する、でした。
私が書くロイは、どうしてこう情けないんだろうか(アンタにそう書く気しかないからなのでは?)
ところで皆さん、ぐりこのおまけって知ってますか?私は小学生の頃よくやったんですが。今の子供もやるんだろうか??

BACK